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最低賃金制度と地域別最低賃金および特定最低賃金について

公開日:2022年11月11日
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最低賃金の額は、最低賃金審議会で審議を行い、決定されることになっています。賃金や物価などの動向に応じて決まり、ほぼ毎年、改定されています。 今年2022年(令和4年)も、最低賃金額の改定あり、最低賃金の引き上げが行われました。

最低賃金制度とはどのようなものか

最低賃金制度とは何か

最低賃金制度とは、その名のとおり、賃金の最低限度を定めたものです。
「最低賃金法」第4条に基づいて、使用者は定められた最低賃金額以上の賃金を労働者に支払う必要があります。

もし、最低賃金額よりも低い賃金で雇用契約を締結したときは、法律によって無効となります。この場合、最低賃金額と同じ額の賃金を定めたとみなされます。ですから、雇用契約の賃金と最低賃金額との差額を、使用者は労働者に支払わなくてはなりません。
たとえ労使の合意があったとしても、最低賃金額よりも低い賃金は認められないのです。

最低賃金には、「地域別最低賃金」および「特定最低賃金」の2種類が設けられています。後ほど、くわしくご説明します。
地域別最低賃金と特定最低賃金が同時に適用されるときは、金額が高い方の最低賃金額以上の賃金を使用者は支払わなくてはなりません。

ちなみに、「最低賃金法」第3条には「最低賃金額は、時間によって定めるものとする」と明記されています。つまり、最低賃金額とは時給額ということです。

最低賃金の対象となる賃金とは

最低賃金の対象となる賃金とは、労働者に毎月支払われる基本的な賃金を指します。
ですから、たとえ毎月支払われるものであっても、いわゆる残業代や精皆勤手当などは、最低賃金の対象となる賃金には含まれません。

もう少し具体的に言うと、下記のようなものは、最低賃金の対象となる賃金からは除外されます。

  • ●臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • ●1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • ●所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • ●所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • ●午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超えるもの(深夜割増賃金など)
  • ●精皆勤手当
  • ●通勤手当
  • ●家族手当

地域別最低賃金と特定最低賃金とはどのようなものか

地域別最低賃金とは何か

地域別最低賃金とは、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金を指します。

地域別最低賃金は、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるように、以下の点を総合的に考慮して定められます。

  • ●労働者の生計費
  • ●労働者の賃金
  • ●通常の事業の賃金支払い能力

また、生活保護に関する施策との整合性にも配慮することとされています。

最低賃金は、業種や職種を問いません。
都道府県ごとに定められているため、全部で47件の最低賃金が定められていることになります。各都道府県の最低賃金は、厚生労働省のホームページで確認できます。

なお、2022年(令和4年)10月からは、改訂された最低賃金が発効されています。こちらも、厚生労働省のホームページに最低賃金の全国一覧が掲載されていますので、ご確認いただけます。

特定最低賃金とは何か

特定最低賃金とは、特定の産業について定められている最低賃金を指します。「産業別最低賃金」とも呼ばれています。

特定最低賃金は、地域別最低賃金よりも金額水準が高い最低賃金を定めることが必要と認められる産業に対して設けられている制度です。

2020年(令和2年)9月1日時点で、全国で228件の特定最低賃金が定められています。
このうち227件は、各都道府県内の特定の産業について特定最低賃金が定められています。例を挙げると、北海道における「処理牛乳・乳飲料、乳製品、糖類製造業」や、沖縄県における「新聞業」などがあります。
残りの1件は全国単位で、「全国非金属鉱業最低賃金」について定められています。

地域別最低賃金と同じく、特定最低賃金の金額は、厚生労働省のホームページで確認することが可能です。

最低賃金制度が適用される労働者の範囲とはどのようなものか
最低賃金制度が適用される労働者とは

最低賃金制度が適用される労働者は、地域別最低賃金と特定最低賃金とで異なります。

地域別最低賃金に関しては、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。
ですから、パートタイマーやアルバイト、嘱託などの、いわゆる非正規雇用労働者に対しても適用されます。くりかえしになりますが、業種や職種は問いません。

特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます。
そのため、適用の対象外となる労働者がいます。たとえば、下記に該当する労働者には、特定最低賃金は適用されません。

  • ●18歳未満の労働者
  • ●65歳以上の労働者
  • ●雇い入れから一定期間未満で、技能習得中の労働者
  • ●その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する労働者
最低賃金の減額の特例制度とは何か

はじめに、最低賃金額よりも低い賃金で雇用契約を締結しても、法律で認められないとお伝えしました。

しかし最低賃金には、減額の特例制度が設けられています。これは、使用者が個別に最低賃金を減額することを特例として認めた制度です。

一般の労働者よりも著しく労働能力が低いなどの事情から、一律に最低賃金を適用することで、むしろ雇用機会を狭めるおそれがある場合などを考慮したものです。ただし、都道府県労働局長の許可を受けなくてはいけません。

下記の労働者に関しては、個別に最低賃金を減額することが認められています。

  • ●精神または身体の障害により、著しく労働能力の低い労働者
  • ●試用期間中の労働者
  • ●基礎的な技能などを内容とする認定職業訓練を受けている者のうち、厚生労働省令で定める労働者
  • ●軽易な業務に従事する労働者
  • ●断続的な労働に従事する労働者
派遣労働者に適用される最低賃金とは

派遣労働者は、派遣元企業の所在地にかかわらず、派遣先企業の所在地の最低賃金が適用されます。

たとえば、派遣元企業と派遣先企業が異なる都道府県にあり、どちらも地域別最低賃金が適用されていたとします。この場合、派遣労働者には、派遣先企業がある都道府県の地域別最低賃金額以上の賃金が支払われることになります。

また、派遣元企業と派遣先企業が異なる都道府県にあり、派遣先企業に特定最低賃金が適用されていたとします。この場合は、特定最低賃金額以上の賃金が支払われなくてはなりません。
すでにお伝えしたとおり、特定最低賃金は地域別最低賃金よりも高い金額水準で定められています。そして、地域別最低賃金と特定最低賃金が同時に適用されるときは、金額が高い方の最低賃金額を適用することになっているからです。

まとめ

使用者は、最低賃金が適用される労働者の範囲や、最低賃金額、最低賃金の対象とならない賃金などについて、掲示などの方法により、周知する必要があるとされています。
ですから、ご自身に適用される最低賃金については、職場において確認できるはずです。

最低賃金は、労働者にとって、セーフティーネットとも言うべき大切な制度です。
もしかしたら、この記事を読んで、自分に支払われている賃金が本当に最低賃金額以上なのか、心配になった方もおられるかもしれません。
その場合は、お近くの都道府県労働局や労働基準監督署にご相談ください。

サガアサコ
長年のキャリアのなかで、総務・労務関係の実務経験は15年以上に。
社会保険労務士の資格取得済み。現在は、知識と経験を活かして、フリーランスのWebライターとして活動中。
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