日本の年金制度は、会社員であれ無職であれ、加入要件を満たしたときは、加入が義務づけられています。逆に、受給要件を満たしたときは、年金をもらう権利が発生します。
この記事では、老齢年金・障害年金・遺族年金について、その概要と受給要件を解説します。
老齢年金とはどのような年金制度か
年金には、20歳以上60歳未満であるすべての人が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員などが加入する厚生年金があります。
厚生年金に加入していて 年金を受給する場合は、基礎年金に厚生年金が上乗せされた金額を受けとれます。日本の年金制度が、俗に「2階建て」と言われるのは、このためです。
老齢年金にも、老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。
- ●老齢基礎年金
- ●老齢厚生年金
国民年金や厚生年金保険などの年金保険に加入して、年金保険料を納付した人が受給できる年金です。
会社などで働き、厚生年金保険に加入して、厚生年金保険料を納付した人が、老齢基礎年金に上乗せして受給できる年金です。
年金の額に関しては、年金保険の加入期間や、納付した年金保険料の額などに基づいて、算出されます。具体的な金額については、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」でご確認ください。
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間の国民年金の納付月数などによって決定されます。老齢厚生年金は、報酬比例の年金額(厚生年金保険の加入期間や過去の報酬などで決まる)に基づいて、決定されます。
年金を受給するには、年金保険に加入していた期間や年金保険料を納付した期間などの合計が、一定年数以上なくてはいけません。
年金の受給に必要とされる加入期間を「受給資格期間」と呼びます。受給資格期間には、年金保険料の免除を受けていた期間も含まれます。
老齢基礎年金にも老齢厚生年金にも、それぞれ受給要件が定められています。
- ●老齢基礎年金
- ●老齢厚生年金
受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受給できます。
老齢基礎年金を受給できる人に厚生年金の加入期間がある場合に、老齢基礎年金に上乗せして、65歳から受給できます。
老齢年金に関しては「繰上げ受給」と「繰下げ受給」の制度が設けられています。 「繰上げ受給」とは、受給開始を60歳から65歳までの間に繰り上げて、減額された年金を受け取ることです。「繰下げ受給」とは、受給開始を66歳から75歳までの間に繰下げて、増額された年金を受け取ることです。
障害年金とはどのような年金制度か
障害基礎年金も障害厚生年金も、病気やけがなどで障害を負い、生活や仕事などが制限されるようになったときに、受給できる年金です。
障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師や歯科医師の診療を受けた日を「初診日」と言います。この初診日に加入していたのが、国民年金であれば障害基礎年金を、厚生年金であれば障害厚生年金を請求できます。
老齢年金とは異なり、受給開始時期に年齢は関係ありません。現役で働いている人であっても、障害年金の受給は可能です。
年金の額に関しては、障害基礎年金は年度毎に、障害等級に応じて決定されます。障害厚生年金は、報酬比例の年金額に基づいて、障害等級に応じて決定されます。また、障害厚生年金の3級については最低保障額が定められています。
ちなみに、障害基礎年金または1級・2級の障害厚生年金を受給する人は、国民年金保険料の法定免除制度を利用することもできます。
障害基礎年金と障害厚生年金にも、それぞれ受給要件が定められています。
- ●障害基礎年金
- ●障害厚生年金
国民年金に加入している間、または20歳前(年金に加入していない期間)、もしくは60歳以上65歳未満(年金に加入しておらず、日本に住んでいる期間)に、初診日がある病気やけがで、障害等級1級・2級に該当する障害の状態になったとき、受給できます。
厚生年金に加入している間に初診日のある病気やけがで、障害等級1級・2級に該当する障害の状態になったとき、障害基礎年金に上乗せして受給できます。障害等級3級に該当する障害の状態になったときは、3級の障害厚生年金を受給可能です。
障害年金は、初診日の前日において、以下の要件のどちらかを満たしていなくてはいけません。ただし、障害基礎年金については、初診日が20歳前である場合にかぎり、この要件は問われません。
・初診日のある月の前々月までの年金加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付あるいは免除されている
・初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がない
遺族年金は、年金保険の加入者本人が受給する年金ではありません。
国民年金や厚生年金保険の加入者、あるいは元加入者が死亡したとき、その人に生計を維持されていた遺族が受給できる年金です。
遺族年金にも、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。死亡した人の年金保険の加入状況などによって、どちらか、または両方の遺族年金を受給できます。
遺族年金を受給することができる遺族にも、要件が定められています。
- ●遺族基礎年金
- ●遺族厚生年金
死亡した人によって生計を維持されていた、「子のある配偶者」または「子」が受給対象者です。
ここで言う「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある人を指します。
死亡した人によって生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い人が受給対象者です。遺族基礎年金を受給できる遺族は、 遺族厚生年金も併せて受給できます。
1.妻(子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給可能)
2.子(※1)
3.夫(死亡当時に55歳以上である場合のみ。原則として、60歳から受給開始)
4.父母(※2)
5.孫(※1)
6.祖父母(※2)
(※1)18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある人 (※2)死亡当時に55歳以上である場合のみ。60歳から受給開始
年金の額に関しては、遺族基礎年金は年度毎に、また、受給する対象者に応じて決定されます。遺族厚生年金は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例の年金額の4分の3の金額です。
遺族基礎年金・遺族厚生年金それぞれに、死亡した人が満たしていなくてはならない受給要件があります。
- ●遺族基礎年金
- ●遺族厚生年金
下記の要件のどれかを満たしている人が死亡したとき、遺族は遺族基礎年金を受給できます。
1.国民年金に加入している間に死亡したとき
2.国民年金に加入していた60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡したとき
3.老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡したとき
4.老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
下記の要件のどれかを満たしている人が死亡したとき、遺族は遺族厚生年金を受給できます。
1.厚生年金保険に加入している間に死亡したとき
2.厚生年金に加入していた期間に初診日がある病気やけがのせいで、初診日から5年以内に死亡したとき
3.1級・2級の障害厚生年金を受給している人が死亡したとき
4.老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき
5.老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
遺族基礎年金・遺族厚生年金の1と2に関しては、死亡日の前日において、保険料を納付した期間(免除期間を含む)が、国民年金加入期間の3分の2以上なくてはいけません。
ただし、令和8年3月31日までに65歳未満の人が死亡した場合は、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に年金保険料の未納がなければよいとされています。
遺族基礎年金の3と4、遺族厚生年金の4と5に関しては、保険料を納付した期間、免除されていた期間などを合算した期間が、25年以上なくてはいけません。
この記事でご説明したことは、あくまでも、老齢年金・障害年金・遺族年金の概要です。
年金によっては、一定の要件を満たせば、加算額が上乗せされて支給されることもあります。
気になる方は、日本年金機構のホームページに目を通すことをおすすめします。