2022年8月2日(火)~8月4日(木)の3日間にかけて、令和4年度(第72回)税理士試験が実施されました。
国家資格の中でも難関といわれる税理士試験ですが、その合格率や難易度はどれくらいなのでしょうか?また、合格に至るまでの各科目の勉強時間の目安についても解説します。
税理士試験・資格とは?業務は多岐に渡る
税理士は税理士法で定められた国家資格です。
税金に関する相談を受ける税務相談、納税者に代わり税額の計算や申告書の作成する税務書類作成、「e-Tax」の代理送信をする税務代理は税理士だけができる業務です。
税務調査の際に納税者の代理人として税務調査に立ち会い、納税者の権利や利益を守ることもあります。個人事業主・法人の会計帳簿の記帳、書類作成など財務・会計に関する業務なども行います。
税理士試験に合格した者、税理士法で定める一定の要件に該当する者として税理士試験を免除された者、弁護士・公認会計士が税理士資格を持ちます。
税理士として働くためには日本税理士会連合会の税理士名簿に登録する必要があります。税理士法人を設立した際にも、日本税理士会連合会に届け出を行います。
税理士登録者数は年々増加傾向にあります。
会計年度 | 登録者数 |
---|---|
昭和35(1960)年度 | 10,888 |
昭和40(1965)年度 | 15,827 |
昭和45(1970)年度 | 24,024 |
昭和50(1975)年度 | 32,436 |
昭和55(1980)年度 | 40,535 |
昭和60(1985)年度 | 47,342 |
平成2(1990)年度 | 57,073 |
平成7(1995)年度 | 62,550 |
平成12(2000)年度 | 65,144 |
平成17(2005)年度 | 69,243 |
平成22(2010)年度 | 72,039 |
平成27(2015)年度 | 75,643 |
平成28(2016)年度 | 76,493 |
平成29(2017)年度 | 77,327 |
平成30(2018)年度 | 78,028 |
平成元(2019)年度 | 78,795 |
令和2(2020)年度 | 79,404 |
(注)「登録者数」は、年度末の人数であり、日本税理士会連合会調べによる。
受験資格は一定の資格・職歴・学識を持つ人とされていますが、2023年4月以降の試験からは要件が緩和されます。
受験資格 | 日商簿記検定1級もしくは全経簿記検定上級に合格 |
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職歴 | 税理士・弁護士・公認会計士の補助事務などに2年以上従事 |
学識 | 大学・短大を卒業した 62単位以上を取得して、大学3年次以上など |
2023年4月以降の試験の変更点 | ・簿記論と財務諸表論は受験資格要件が撤廃され、高校生や大学1・2年生でも受験できる ・「法律学又は経済学」を履修する必要があったが、「社会科学」に拡充されたため、文学部や理工学部の大学生・卒業生の受験も可能になった |
試験は合計5科目で行われます。
会計学(簿記論・財務諸表論)の2科目、税法の科目(所得税法・法人税法・相続税法・消費税法又は酒税法・国税徴収法・住民税又は事業税・固定資産税)のうち受験者の選択する3科目です。
所得税法又は法人税法のいずれか1科目は、選択が必須となっています。
合格点は各科目で60点以上、合計5科目で60点以上を取れた際に合格となります。
税理士試験は科目合格制となっており、1科目ずつ受験しても構いません。
税理士試験の合格率から見る難易度、勉強時間の目安
税理士試験の合格率、受験者数、合格者数の推移は以下のとおりです。
年度 | 合格率(%) | 受験者数 | 合格者数 |
---|---|---|---|
2017 | 20.1 | 32,974 | 6,634 |
2018 | 15.3 | 30,850 | 4,716 |
2019 | 18.1 | 29,779 | 5,388 |
2020 | 20.3 | 26,673 | 5,402 |
2021 | 18.8 | 27,299 | 5,139 |
5年間の平均合格率は約18.5%で、税理士試験が難関資格であることが分かります。受験者数は少子化の影響等で、年々減少しています。
科目 | 種別 | 目安となる勉強時間 |
---|---|---|
簿記論 | 必修 | 450~500時間 |
財務諸表論 | 450~500時間 | |
所得税法 | いずれか1科目必修 | 600~700時間 |
相続税法 | 600~700時間 | |
消費税法 | 選択 | 450~500時間 |
酒税法 | 150~200時間 | |
国税徴収法 | 150~200時間 | |
住民税 | 150~200時間 | |
事業税 | 150~200時間 | |
固定資産税 | 200~250時間 |
なお2021年度の試験では合格率が高い科目は順に簿記論・財務諸表論・住民税法であり、合格率が最も低い科目は相続税法、次いで所得税法、国税徴収法となっています。
税理士試験に合格するためには?独学も可能?
2021年度の税理士試験の結果を学歴・年齢別で見てみましょう。
学歴別では「その他」が最も合格率が高いですが受験者数(母数)が少ない状況です。
「その他」を除くと「大学在学中」が31.1%と最も合格率が高いです。他の資格と同様に社会人より勉強時間を取りやすい学生が有利と言えるでしょう。
年齢別のデータでも25歳以下が最も合格率が高く、年を重ねるにつれて合格率は低くなる傾向にあります。
社会人は勉強時間の捻出と環境整備が合格するためのポイントとなります。
上記のデータでは41歳以降の受験者数が最も多いですが、合格率は最も低いという実状があります。40歳以降になると会社で指導・管理する立場、重要なポジションを任される人が多いでしょう。よって、勉強時間の確保が難しい環境になり合格率が低くなるのではないでしょうか。
勉強時間を捻出するためには、「家の中に勉強するスペースを確保し参考書を並べておく」「朝○時になったら必ずカフェに行って勉強する」など環境を整え、習慣づけることが重要です。
自宅や図書館・カフェなど「勉強モード」になれる場所を見つけ、決まった時間に勉強するよう心がけましょう。
「どうしても試験に合格したいけど仕事が忙しい」という方は、残業が少ない仕事への転職も視野に入れておきましょう。
人間にはそれぞれ「学び方のクセ」があり、情報処理の段階で V(Visual:視覚優位)A(Audio:聴覚優位」)K(Kinaesthetic:運動感覚優位)という3つの学習選好があります。
視覚・聴覚・運動感覚と個人の生来的なものを基とした学習方法を、VAK学習スタイルモデルと呼びます。
例えば目で見て学習することが得意な視覚優位の方は、ノートや図表のように書かれた視覚情報を処理する能力が高いです。
図表を多く用いたテキストを購入し眺める、教科書に書いていることをノートに表で書いて覚えるなど視覚情報で学習するスタイルが効果的です。
聴覚優位の人は話を聞くことで効率的な情報処理が可能です。
聴覚優位タイプの人は専門学校やスクールに通い聴講する、覚えたいことを録音して聞くなどの方法で効果が出やすいでしょう。
運動感覚優位の人は、座り続けて学ぶのが苦手で身体を動かして覚えることで効果が出やすいと言われています。書く、読むなどアクションを取り入れた方法で学習していきましょう。
国や文化により異なる可能性がありますが、2006年の海外の研究では人口の 65%が視覚優位、30%が聴覚優位、5%が運動感覚優位という報告結果があります。
自分がどのタイプかを見極め、効果的な学習方法を用いていきましょう。
現代ではYoutubeなどオンラインの学習も可能ですので、独学で受験が不可能という訳ではありません。
しかし税理士試験は国家資格の中でも難易度が高いため、専門学校やスクールに通い講師から学ぶことで合格の可能性が高くなると言えるでしょう。
税理士の業務や税理士資格について、税理士試験の合格率、科目別の勉強時間などをお伝えしてきました。税理士は5年間の平均合格率が約18.5%という難関資格ですが、社会人は学習の習慣づけや自身に合った学習方法で合格を目指し勉強していきましょう。